26日はボクシング・デー。インターナショナルクリケットでは、テストマッチ「オーストラリア-インド」「ニュージーランド-パキスタン」「南アフリカ-スリランカ」の3試合が行われています。
クリケットの中で、最も格式があると言われ、ICCが認定したナショナルチームでないと参加できないゲーム方式です。最大5日間にまたがって行われます。「テスト」の意味は、長く厳しい試合を精神的にも肉体的にもテストされている事実から由来しています。
初めて公式でテストマッチが行われたのは、1877年にメルボルン・クリケットグラウンドで、イングランド-オーストラリアの対戦で行われました。
参加国
テストマッチは、ICCによって認められた「テストステータス」を持つ、代表チームの間で行われる試合形式です。参加国は以下の通りになります。
🏴イングランド(1877年3月15日)
🇦🇺オーストラリア(1877年3月15日)
🇿🇦南アフリカ(1889年3月12日)
西インド諸島(1928年6月23日)
🇳🇿ニュージーランド(1930年1月10日)
🇮🇳インド(1932年6月26日)
🇵🇰パキスタン(1952年10月16日)
🇱🇰スリランカ(1982年2月17日)
🇿🇼ジンバブエ(1992年10月18日)
🇧🇩バングラデシュ(2000年10月10日)
アイルランド(2018年5月18日)
🇦🇫アフガニスタン(2018年6月14日)
南アフリカはアパルトヘイト政策の影響により、1970年から1991年まで剥奪され、ジンバブエは資格不十分として2006年から5年間、自主的に離脱していました。
服装とボール
テストクリケットでは、伝統的に選手は全員白いユニフォームを着用します。防具もグローブも白と決められています。ボールは赤色を使用しています。
これはスポーツ競技において、上流階級のスポーツであったクリケットにおいて、太陽の眩しさを反射する白が美しく見える理由でふさわしいと見られていました。
また、夏場のスポーツであるクリケットは長時間のゲームに耐えられるように、日射病や脱水症状を防ぐ意味もあります。
プレー時間
テストマッチの1日の流れとしては、それぞれ2時間ずつ試合が行われ、2時間毎で昼食が40分、ティータイムが20分の休憩時間があります。
ただし、悪天候による中断やイニングの交代など、休憩時間の時間が早く行われることがあります。また、悪天候による中断が長引いた場合、プレー時間は中断によって失われた時間を補うように調整されることもあります。
予定されているティータイムの時間になったときに、ウィケットを奪った数が9になっていた場合、ティータイムの時間を最大30分遅らせる場合があります。これは試合終了を予定している時間に迫った場合でも同様で、最大30分延長されます。ただし最終日の5日目には適用されません。
テストマッチは、5日連続で行われます。5日目になっても両チームのイニングが終了していない場合は、点差が大きく開いても引き分けとなります。
ゲームプレイ
テストマッチは、オーバーは無制限、2イニングで行われます。各チームは2回ずつバッティングを行い、2回ずつ守備に回ります。試合前のコイントスで先攻・後攻を決定します。
最初にバットを持つチームをAチーム、後からバットを持つチームをBチームとします。
Aチームが攻撃を終了すると、Bチームがバットを持って攻撃に入ります。守備から入ったチームは、次には攻撃に入ります。攻守は交代で行われます。
イニングの終了
チームのイニングは次のように終了します。
オールアウト
通常、攻撃側が10アウト取られた場合は、攻撃側のイニングが終了します。クリケットではアウトになると、このイニングではもう2度と打撃に入ることができません。クリケットでは2人のバッツマンが1組になるため、11人中10人がアウトになると、攻撃が終了します、これはODI、T20Iの方式でも同じです。
デクラレーション
オーバーが無制限のテストマッチでは、ODI、T20Iのように規定オーバー終了での攻守交代はありませんが、代わりにイニングを終了する方法があります。
それは「自らイニングの終了を宣言する」ことです。
テストマッチでは、5日間までで両チームのイニングが終了していないと、どれだけ点差が開いていても「ドロー(引き分け)」となります。テストマッチでは、ドローを防ぐために、バッティングサイドのキャプテンは、攻撃イニング終了を宣言することができます。
試合に勝利する以上は、十分な点差をつけなければなりませんが、点差にこだわりすぎるあまり、いつまでも攻撃を続けていては、試合に勝利することができません。チームの勝利のためには、キャプテンの判断力が大きな鍵を握っています。
フォローオン
テストマッチでは、ドローの乱発を避けるためのルールが存在します。
順番 | バッティング |
1 | Aチーム |
2 | Bチーム |
3 | Aチーム |
4 | Bチーム |
Aチームが先攻、Bチームを後攻とします。
Aチームが攻撃を終了したときに、次はBチームの攻撃が始まり、Aチームが守備に入ります。お互い1イニングずつの攻撃が割ると、従来なら2イニング目は、Aチームから再び攻撃が始まります。
順番 | バッティング |
1 | Aチーム |
2 | Bチーム |
3 | Bチーム |
4 | Aチーム |
だが、お互いに1イニングのバッティングが終わった際、AチームがBチームに対して、大幅に点差を開いているときは、Aチームのキャプテンは、2イニング目の攻守の入れ替えを命じることができます。これが「フォローオン」と言われます。
5日間での試合では、Aチームが200ラン差以上開いている場合、Bチームに対して、2イニング目に攻守の入れ替えを要求して、Bチームに先に打つように要求することができます。悪天候での中断を挟んだ場合は、100ラン、150ランでのフォローオンも可能な場合もあります。
フォローオンは、今月11日に行われた「ニュージーランド-西インド諸島」で発生しました。
順番 | バッティング | スコア |
1 | ニュージーランド | 460 |
2 | 西インド諸島 | 131 |
3 | 西インド諸島 | 317 |
4 | ニュージーランド | – |
西インド諸島が131+317ラン
12ラン差でニュージーランドの勝利
1イニング目に、ニュージーランドが460ランを獲得し、西インド諸島が131ランを獲得しました。ニュージーランドは、西インド諸島に対して、329ラン差をつけているため、従来ならニュージーランドのバッティングになるところですが、フォローオンを命じ、先攻と後攻が入れ替わりました。よって3イニング目は西インド諸島のバッティングから始まります。
そして、西インド諸島は10アウト奪われた時点で、317ランを奪ったものの、ニュージーランドに対してつけられた点差、329ランに及ばなかったため、ニュージーランドの2回目のバッティングは行われることなく、試合はニュージーランドの勝利が確定しました。
このルールは、制限時間終了によるドローを防ぐために存在します。ドローの乱用をフェアと見做さないクリケットらしいルールと言えるでしょう。
フォローオンを実施しない場合
ただし、フォローオンは先攻側のキャプテンが決めることであって、必ずしも行われるわけではありません。点差が大きく開いていても実施しない場合もあります。その理由は以下の通りです。
一つはボウラーが2イニング連続で投球するため、疲労により、1イニング目よりも投球をこなすのが困難な場合があります。フォローオンを行うことによって、2イニング連続投球により疲労が蓄積したボウラーが、狙い撃ちされる可能性は高まってきます。
更に5日間にまたがるプレーでは、徐々にピッチ状態は悪化していきます。特にスピンボーラーは、投げ続けるとピッチの状態は悪化していくので、最後にバッティングに入るチームにとっては、非常に打ちにくい状態に最後のイニングを迎える場合もあります。
大幅な点差が開いていれば、先攻のキャプテンはフォローオンによる、攻守入れ替えを命じることはできますが、ボウラーの疲労状態やピッチの状態を見て判断しなければなりません。
まとめ
5日間にまたがって行われる「テストマッチ」。単純に「ランを稼ぐ」「ランを防ぐ」だけではなくて、両チームは5日間で試合がまとめるように、両チームのキャプテンは「デクラレーション」「フォローオン」などを駆使しなければいけません。どれだけ点差が開いても、5日間の間で終わらなければ、ドローになってしまうため、チーム全体の試合運びを求められます。
最大5日間での戦いは、技術や体力はもちろん求められますが、それ以上に精神面を求められていると言ってもいいでしょう。
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